日誌 その22

前回の続き。

ただ彼がパソコンにDISKを入れ替えたりするのを椅子に座って眺めている
しかなかったのですが数分後、

「新しくキャラDISK作ったら、まず名前つけてや」

促されて初めてパソコンのキーボードの前に座り、何やら王様らしき絵を
映し出した画面を見ながら、しばし悩んだ末に、

Beep

と名付けると、彼も爆笑していました。

彼に助言を貰いつつパラメーターを付与していき、もちろん存在も知らなかった
「謎のアイテムショップ」で、最初から持ってるスペクタクルズ?を全部売り
代わりに、

「最低マントは4つくらい買ってた方がええよ」

助言されるがまま、マント(壁をすり抜けるアイテム)、ブラックオニキス(次の
レベルへ進める)、ファイアークリスタル(1つ元のレベルに戻る)とウィングド
ブーツ(一定時間空を飛べる)を書い、最初のケーブへ。

初めて、ザナドゥの世界に降り立ちました。

もう極度の興奮状態でよく憶えてないのですが、まずテンキーになれておらず、
敵の只中へ突進し、結果囲まれてボコらて数分もしない内にエリクサー(その
場でHP満タンで復活できる)を使った記憶があります。

小1時間悪戦苦闘するも、操作が思うようにいかず3つ持ってたエリクサーを
比較的弱いBatや蛇で何度か使い切って、最初からやり直しの憂き目を味わった
のを見て、

「一回ブラックオニキス使って強制セーブしよう」

最初言ってる意味が分からなかったのです、ブラックオニキスやファイアークリス
タルを使うと、使った前の状態でセーブされるので、何度も何度も最初からやり直し
しててはキリがないので、彼なりの救済措置でした(Ctrl+Qでセーブも出来たと思い
ますが、たしかゴールドを消費した記憶があります)。


彼に助言を貰いつつ、なんとか城の中も探索出来る様になったのですが、既に
始めてから5時間ほどあっという間に経過してて、砂を噛む思いで帰宅する旨を
告げると、

「これはお前専用のDiskやから、これからもちょいちょい遊びに来てクリアしよや」

彼はそう言って玄関まで見送ってくれました。


それからは、毎週の様に家に遊びに行きました。

土曜日は彼の家でザナドゥをやってから一緒に塾へ行くのが定番となり、ある時からは
パソコンの持ち主たるお兄さんも輪に加わるようになりました。

当時大学生だったので、歳の離れたお兄さんと接するのは緊張しましたが、僕がヘマやって
敵にやられると、

「うん、斬新な死に方やね」

そう言って笑い合う気のいいお兄さんだったのですぐに打ち解けた思い出があります。


なんやかんやで地下5階(LV5)までは到達したのですが、あの「マイコニド」に
ボコボコにされ、なんとか5階を踏破する頃には、レッドポーション(回復薬)の残数が
ゼロになってて3人で協議した結果、

「最初からやり直さないとこの先は無理だと思う」

に居たり、断腸の思いでリセットする事に・・・。


「Beep2」という名前でキャラを作り直してやり直したのだけど・・・レッドポーションを
温存する対価として「INN(宿屋)」を多用する事になり、またも5階到達時に前回装備
したものを下回る武器防具しか変えず、更にマイコニドに刃が立たずまたも、

「もっかい最初からやり直そうか・・・」

の結論に至る。


なぜアイテムやゴールドで行き詰まってリセットなのかと言うと、ザナドゥは当時としても
珍しかったイニシャルセットアップ(だったかな)のゲームだった。

要するにその階層、階層で手に入るアイテムやゴールドの総量は確定されていて、
例えばドラクエの様に、

「ダーマ神殿周辺でLV上げと金稼ぎしよう」

が出来ない。決まった数のモンスターしか存在しないから。

なので回復にゴールドを使いすぎると物が買えず、かと言って回復アイテムを使いすぎると
何処かで枯渇する。

よくザナドゥはRPGというよりパズルゲームと言われる所以である。

毎日何時間もプレイして数ヶ月掛かる。当時の特にパソコンRPGでは良く言われた
事だけど、兎に角ネットもない時代でファミコンほど攻略記事が豊富でなく、また
ファミコンのゲームのように、万人向け(それでも当時は無理ゲーもおおかったと思うけど)
でもないパソコンのRPG。その中でも膨大なトライアンドエラーが必要だったのが
ザナドゥってゲームだった気がします。

マントを仮に10階までに使い切ってたら、ある重要なアイテムは絶対に手に入らないし、
武器からアイテムに至るまで「熟練度」が儲けられていたので、それを怠るとそもそも
クリアが不可能な仕様だった。


これだけ読むと、単に不親切なゲームにしか思えないかも知れない。

けど、64色やパソコンでも4096色(条件ありで)しか表示できない時代の事。
解像度も今のエアコンのリモコンより低かったのかもしれない。

そんな時代に、

こんなデカキャラがダンジョンの奥に潜んでいて、それを討伐する事に当時の僕達は
なんとも言えない冒険心を掻き立てられ、毎日、毎日まだ見ぬ敵や装備に夢を
馳せつつ、想像に胸膨らませて生きてた気がします。

ブログを再開した最初の頃に書いた「スカイリム」とは、こうして比べると別次元の
ゲームです。自由度もなく平面でシステムも今からすると不親切極まりなかった
気もします。

ただ、スカイリムには無い自由に想像する余地だけは、この時代の国産RPGにも
あったように思うし、グラフィックやゲームのアイデアって部分の水準は世界的に

見ても抜きん出てた様に今でも思います。


結果的に「Beep3」で再度出直し、

「ちょっと裏技やけどな」

そう彼に言われて、5階到達時にブラックオニキスを4つ使い、9階のとある城の
目の前にテレポートして、アワーグラス(一定時間時を停める)とマントを
使って、Murasame Blade、+5 Large shield、Reflexを回収する現在では定番の

攻略法を敢行した。

この3種の武器防具が9階で最後の王冠を守るシルバードラゴンを倒す前に

手にできる最高の装備でした(10階の城に各最強の武器防具があるが王冠を4つ

持ってないと入れない)。

ではなぜ最初から取りに行かなかったのかというと、お兄さんの方針だった

らしく最初からこれらの装備を身に着けてしまうと8階位まで無敵状態で完全な

ルーチンワークになってしまうので、頃合いを見計らっていたと後に聞いた。

一旦4階に戻り、敢えて残しておいたDeg系の魔法を掛けてくる敵の攻撃を

受けて、装備の熟練度を上げると正面からなら9階の敵にも攻撃を受けなく

なってて、5階(マイコニドで)苦労してだけにちょっと感動したものです。

ただ、

「その装備で剣(Murasame Blade)の熟練度255でもシルバードラゴン

倒せないから、お金貯めてDeath買わなあかんよ」

と助言され、一切無駄遣いせずに貯金し、7階の王冠を守るデカキャラを倒す

頃には目標金額が貯まって、また少し戻ってDeathの魔法の熟練度を上げ、

いざ9階のシルバードラゴンへ向かうと、言われた通りDeathだけで倒せた。

「もう1つ先の部屋も入ってみ」

言われるがまま入ると、最後のボスking Dragonが居て瞬殺され2人に爆笑

されたのは言うまでもない。


このラストのボスの配置も当然ながら、当時としてもザナドゥは類を見ない

「意地悪」なゲームだったと思う。

人の心理を利用した罠が至る所にあったりして。開発した人は相当なへそ曲がり

だと子供ながらに思ったりしましたけど、今思うと天才だったように思う。

経験値を貯めて寺院んでLVを上げると次の階層への扉が開くのですが、無為に

LVを上げるとHPや攻撃力は確かに強くなるので、モンスターとの戦闘はやや

有利になるのだけど、マップや城の中の施錠された扉を開ける「鍵」がLVに

応じて値上がりするシステムで、ラストの装備をゲットする頃まで慢性的な

金欠になりがちなゲームだったので、LVアップは兎に角最低限で行うのが常

でした。

よって、階層を進むにつれて強化されるモンスターとは絶えずやや不利な

戦闘を強いられ、9階の装備を揃える位までは、ずっと緊張感を持ってモンスター

と対峙するバランスになってたのは、今にして思うと凄いと思う。

もっとも、ラストの近くで頭の痛い問題は鍵では無くて、もりもり減っていく

フードの確保だった様にも思いますが。99Gずつしか買えないフードをを

20万食とか買うのが面倒でしたw。


この後は、10階へと乗り込み潤沢にストックしてたアワーグラスを惜しみなく

使いながら最後の城を踏破しました。

マントもしかりあったので隠し部屋の、+7Large shieldも取りこぼさずゲットし、

Vorpal Weapon、Battle Suits、そしてking dragon討伐に必ず必要なその為だけの

武器、Dragon Slayerもゲットして三度4階まで戻って、各装備の熟練度を上げつつ

9階を目指して、前回は瞬殺されたking Dragonと対峙すると・・・

思ってた以上にあっさりと勝ててしまった。

でもその直後に流れる、文字だけだけどエンディングを目にした時は、子供ながらに

こみ上げてくるものがありました。


この時が、ちょうど今と同じ頃の7月の終わりだったと思う。

毎週の様に通って、クリア経験者に助言貰いながらも2ヶ月近く掛かった事になる。

そんなやり遂げた余韻に浸っている僕に、

「さて、次はシナリオ2をする・・・?」

どこか意味深に聞かれたのを感じたけど、シナリオ2に挑戦する意思表示を伝えた。


だけど、

結果から言うと、シナリオ2はクリア出来なかった。

付け加えると、当時、彼もそのお兄さんもシナリオ2はクリアして居なかった。


続く。

格子力映像研究所 V9

またまた懲りずに復活 (゚∀゚)

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